私の住むマンションは壁が薄いらしい。隣の部屋の物音がよく聞こえる。
こちらにこれだけ聞こえているのだから、隣にもこちらの物音が聞こえるだろう。
私は、洗濯機を使う時間帯やテレビの音の大きさにも気を配って生活していた。
しかし隣人は気にしている様子はない。
会ったことはないが、夜型の生活らしく、毎晩深夜になると動き回る足音や物音が壁越しに聞こえてきた。


その日は特にひどかった。
激しい足音や家具を引きずる音、果ては壁にぶつかるような音まで聞こえてきた。
眠ろうとしても、その音のせいで眠れない。
布団の中で寝返りをうちながら、私はつぶやいた。
「うるさいなあ」
そのときだ。
「悪かったな」
その声は、すぐ近くで聞こえた。
確かに、この部屋のどこかで。
誰かいる……!
私は布団をはねのけて起き上がり、暗い部屋の中に向かって叫んだ。
「誰かいるのっ!?」
「……俺だよ」
壁のほうから声がした。
そちらを見ると、壁の真ん中に男の顔が浮かび上がっていた。
息を呑む私の目の前で、顔は壁からずるずると出てくる。
やがて肩、胸、腹……次々に現れ、男の上半身が壁からぬっと突き出している状態になった。
男は声も出ない私に向かって、血走った目をむき、無精ひげに覆われたあごがはずれそうなほどに大きな口を開け、けたたましい笑い声を上げた。
−−−FIN


今回はあなたの「煩悩」を分析します。
あなたはお金に対しての煩悩が強いようです。友人との交際費や人への贈り物にお金を使うよりは、自分のためにお金を取っておきたいと考えているよう。
仕事など、お金を儲けることには真面目ですが、付き合いなどでの出費は惜しいと感じているでしょう。
ふと気がつけば、友達のいない孤独な小金持ちになっているかも……。